背景を上手に描くには

幾何形体 色 影

多少のポイントは書いていますが、とりあえず形にしたいという初心者の方や、絵って何を考えて描いているのかすらわからない方用のページになります。
それと、線画だけの仕事、マンガやアニメーター、美術設定などを習得したい方はあまり役に立たないサイトです。影の付け方くらいでしょうか。
ほかに、意味はわかったという人は「難しい人は真似てみよう」へ、オリジナルで描ける様になりたい方や専門知識がほしい方は「覚えましょう」へ、仕事に興味、描き方に興味のある方は各動画をご覧ください。

ファントムオブキル

とりあえず絵に見せたい方

とにかく明と暗をぶつけ合ってみましょう。明と暗=白と黒を調整していくこと。

カラーの絵はとにかくいろんな手段を使って明暗を調整します。カラーといいながらも色で調整するのではなく、まずは明暗です。

この絵を調整してみます。明暗をぶつけ合って表現していることがわかってもらえればうれしいです。
赤い枠をご覧ください。夕景空に壊れたビル郡が中距離あたりに描いてる絵です。

夕景の廃墟 背景
  • ビル 廃墟
    拡大するとこんな感じです。
    右に太陽がある為明るい面と暗い面で2面がはっきり見える廃墟化したビルです。
  • 夕空 廃墟 ビル
    夕空に浮いている雲を動かし、空を少し明るくしてみました。どうでしょう?
  • ビル 明暗
    明暗なので白黒にしてみるとこうなります、暗い雲とビルの暗い面、明るい空とビルの明るい面が同じ位置にあるため繋がって見えてきます。手前のために奥を描き、奥のために手前を描く。持ちつ持たれつです。


  • 背景 明暗
    他も調整してみましょう。○で囲ったところを見てください。まず右上ですが三角型の先端ですが空が上から空、雲、空と重なっている為先端は暗い、明るい、暗いにしてあります。
    左下の○をご覧ください、画面中央に向けて車がはっきり見えるようにしています。人の目は中央から隅に向かってぼけているからです。
  • 背景 明暗
    こうするとどうでしょう。先端は明るく描いてしまいました、その為空と繋がって見え、雲のほうが濃くはっきり見えます
    車は逆に隅を濃くしています。近いはずの車が見えず、遠いはずの場所がはっきり浮き出ています。車の大きさと見え方が比例せず見てる側が落ち着きません。


  • 背景 明暗
    さらに左のビル、中奥のビル、一番奥のビル、空、右のビルをいじりました。もう距離感はごちゃごちゃの上、左のビルと空、一番奥のビルと空がコントラスト強すぎて見えすぎです。
  • 背景 明暗
    さらにこうするとどうでしょう。左のビル上部は空とくっつき、空を明るくしたため一番奥のビルはとても目立ち、目立たせたいはずの三角錐の物体は見えずらい、さらに地面の水が繋がってしまい、なんなのかさっぱりわかりませんね。
  • 背景 明暗
    これが最初の画像を白黒にしたものです。比べてみるとすごいですね。


絵に慣れていない人でも違いを簡単に判断できる方法があります。それはここにあるサムネイルです。
拡大し、近くで見ると質感ばかりが目に入り、全体が見えません。ということは白黒のコントラストが見えずづらく立体表現の確認がとりづらくなるのです。「5m、10m離れてみろ」とよく先生方が言うのは面が大切なんだろということを気づかせることにあり、細かいものより全体のバランスだということを確認させるために行います。サムネイルはこれと同じものを見ていることになるのでサムネイルでかっこいい絵=面が取れている絵ということになるのです。

もう一つこの絵の柱で見てみましょう。

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  • 背景 明暗
    3つの枠をご覧ください。
  • 背景 明暗
    青=奥壁が白いので暗い木を生かしてはっきり差を出していいます。
    黄=柱の真ん中でもあるので上下と違う変化を入れたい。そこで奥へ暗い物体を置いて明るさをぶつけました。
    赤=床と接しているので照り返し表現で差を生み出しました。
  • 背景 明暗
    柱だけを見てみるとこんな感じです。線で区切るのではなく、面として差を出すことがポイントです。


明と暗から絵作りに入ればとりあえずの絵は描けます。

描ける人と描けてる風の人

当然練習量の差と見せるべきところはどこかを説明しているかどうかです。

独学でがんばっている、もしくは今日からやる、将来プロになる、なんて方用の説明ですのでプロ級の方は無駄な時間を過ごしてしまうと思います。

さて、どこをどうすると描ける人になるかですが、絵の大切な順はこうなのですがそうでない絵が”描けてる風”の人です。(あくまで色を付ける絵です、マンガのような線画は別です)

面の明暗>距離感の明暗>質感>カラー
面と距離は同じくらい重要で、質感とカラーがどっこいどっこいでしょうか。質感からこだわるのは一番よくありません。どこで勉強されてもこの順でカリキュラムが組まれているのではないでしょうか。失敗させるということで逆に行うことも一つですが。

これはなぜなのか

それは立体に見せることを第一に考えるからです、立体です。でこぼこ表現です。一概にビル、家などを言っているのではなく、手前と奥、これもでこぼこ表現です。背景も人物も決まったフレームを作成する場合、どんな場所でもでこぼこ表現を入れなればならないからです。

ではそう見せるためにはどうすればいいのか

それがカラーではなく明暗になるわけです。
こちらの絵をご覧ください。上面=青色、側面=紫、影面=緑で塗られている立方体に光を当てた絵です。わかりやすく全部を違う色で塗られた立方体という感じです。※PC環境によって多少の違いがございます。
この時点で非常にかっこ悪い。これはなぜなのかが分かれば見せ方がわかります。

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  • 背景 明暗
    この3箇所をご注目。
  • 背景 明暗
    グレースケールにしてみるとこうなります。
    どうでしょう。
    立方体の大切な角がくっついていますし、奥の床とも一緒です。立体に見えないという一番やってはいけないことですね。


立体に見えるよう修正してみましょう。

“立体=面の違いが存在する”ですのでグラデーションを使って調整します。

001.jpg

 

  • 背景 明暗
    最初に考えるところはここ。光がどこにあって影がどこかです。
  • 背景 明暗
    その中で面の向きの違いを表現し、グラデーションを使って角に明暗をぶつけ合っていけば完成です。


この”面”が立体のすべてになります。箱では上に1面、横(側面)に2面が見えて箱、、コップは淵が上の面でそれ以外は曲面、車は屋根、ボンネットが上、窓、ドアが側面。斜めはその中間ということになります。
このように違いがあって立体に見えます。これを色ではなく明るいと暗い(明暗)の調整でかっこいい立体し、その物が持っている固有色も考えて絵を描いているわけです。

基本である立方体からすべてを考える練習をしますのでまずは立方体を理解し、応用へつなげてください。
これしかないのです。立方体は最大3面しか見ることが出来ませんので1、明・明・明。2、明・明・暗。3、明・暗・暗。4、暗・暗・暗。このどれかです。

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明と明だったとしても上面か側面かによって見え方、明度は変わってきます。
これで3面を光と影で調整が出来、立体になったわけです。明と中と暗を3等分という単純に作成するのではありません。

そしてさらにここからが重要です。これは全部に言えることで立方体だからとかビルだからとかではありません。
木と木、山と山、山と空、地面と水、別物でも離れていても2D静止画を制作する上で明と暗をいかにうまくぶつけ合うか、これを練習し、極めてゆくのです。
ということで一番上の「とりあえず何とか絵に見せたい方」をさらに細かく調整できるようになればかっこいい背景につながっていきますので是非習得を心がけてください。でも・・・・こんな知識より技術です。百聞は一見にしかず、百見は一行にしかずデスヨ!

素人の域を超える

空気を描く
背景は立体に見せることを第一前提と説明しました。
立体ということは聳え立つビルのように、でこぼこさせる描き方が立体になるということ。
これは上下だけでなく、手前と奥へでこぼこさせてこそ究極の立体になるわけです。
そこで地球上にあるものをカラーででこぼこ表現に見せるためには、白黒の明暗にプラス、われわれの目に見えているカラーの世界、そう、光の原理を理解し、光を描くことにより立体を描いたことになるわけです。

光を描くことで物は見えてくる。奥にあるのも手前にあるのも光を調整することで距離があるようにみえ、そこには必ず光が目に入っているわけです。

ということは原理として

光を描く=空気を描く

になるわけです。

背景業界を作り上げたと言っても過言ではない神様的存在、あの男鹿和雄さんが勤めていた会社の社長、小林七郎氏の画集も「空気を描く美術」と題されています。
この小林さんの会社を出られた小倉公房の小倉宏昌氏(攻殻機動隊、機動警察パトレイバーの美術監督)が出された画集も「光と闇」と題されています。


色彩学で言われている目の性質、可視範囲、その中にある3原光、3原色をが目に映るすべての原理をあらわしていてるので一度勉強してみることをお勧めします。
ただ、それを知ったからといってうまくはなりませんがオリジナルへの道は一歩近づくかもしれません。

さらに光の仕組みを知りたい方は「光を描いて空気を描く」をお読みください。

後回しが丁度よいパース

人の目は奥行きが見えないそうです。でも奥にあるように見え、はるか彼方にあるように見えます。これは生活の中で奥にあることを肌で感じ脳が理解したことで見た目で奥にあるように作り上げるんだそうです。

パース(透視図法)はその奥にいっているように見える原理を説明しています。そのような本は数多く出版されていますので読んでみるのもいいかと思いますが、いきなり本から入るのはお薦めしません。薦めないというかやめたほうがいいと思います。

癖って怖いもので形から練習する人はどんな絵も形を描いて塗るという癖が付きます。面で捉える人は形は後で考えるくらい面で塗っちゃいます。たとえば雲。雲の形を描いて塗るのではなく、平筆、デジタルでは四角く広がったような、すでに形があるものでざくざく塗っていきます。この違いはかなり大きいので面で捉える癖を付けるためパースからはやらないほうがいいでしょう。
これはパースに限ったことではないのですが、先に知識を得ようとする考えはクリエーターには向きませんのでやめたほうがいいと思います。
知識を得てしまったばっかりに下手な絵を描きたくない、怖くて描けないという結論に至る人が多い気がします。習うより慣れろ、百聞は一見にしかず、百見は一行にしかずでがんばってもらいたい。(このサイトの意味がなくなる言動だ・・・)

でもどうしたらいいかわからないという声は聞きます。そこは背景のいいところ。目の前には答えがあります。写真には現実が写っています。人間の目は二つあるのでレンズも二つほしいところですが資料ならすぐ手に入る時代なので探しましょう。それこそ研究心!

一つご紹介します。いろんな本が出ている中、マンガ方式で解説している素晴らしい本です。
パースが全く理解できない人やこれから勉強しようとしている初心者の方には解りやすく習得できるのではないでしょうか。

色彩学

すべて理解する必要はありません。代表的なものを上げておきます。

可視範囲、プリズム、3原光、3原色、色相環、補色、膨張色と収縮色、寒色と暖色、彩度明度色相

さらにクオリティーを求めるならばインテリア関係、建築関係、デザインをお勧めします。科学的なことばかりですと現代しか描けませんからね、非科学的なことも是非に。

質感は最後

これは最後です。最後ですが今まで説明した明暗、色彩学、パースにこの質感を入れたときリアリティーが格段に上がります、上がりすぎてアニメ背景とは離れた背景になりがちです。
写実的が求められるものには質感をそっくりにし、アニメ背景のような柔らかさを大切にする背景にはデフォルメを多めに。

物をひっぱりだして全部おぼえるのではなく次の項目を一つづつ覚えておけば応用できます。
木目、金属、水たまりや水面、土と砂、硬いものと柔らかいもの

質感について注意してほしいことがあります。
まず一つ、このページでは散々説明しましたが質感よりも明暗です。立体に見えなかったり空気感ごちゃごちゃだったりパースが違っていたりするものをどんなにリアルな質感を入れても素人の域を超えません。
必ず明暗から理解してほしいと思います。
二つ目にデジタル作品では本物の質感をはめ込むなんてことは普通に行われます。そのため逆に”アニメっぽさ”や”デフォルメを加えた”なんて作品を描ける人が仕事では重要になります。リアルにするほうが簡単になった現代、最初からそのようなことをせずアニメ背景のよい見本を見つけ技術を盗んでいってほしいと思います。
苦労をしますがその苦労を通ってきた社長さんなので「是非うちに」という話になるわけです。手を抜いた作品はバレますのでご注意を。

  • 背景 明暗
    本物の木目をはめ込んでみました。目の向きはパースに合わせて調整してあります。
  • 背景 明暗
    光をたき、影面が発生、上と側面が見えてきましたね。
  • 背景 明暗
    影が落ちれば現実的な背景が完成です。質感に頼らないでほしいという例です。


さぁ練習です。「難しい人は真似てみよう」の「立方体」をやってみましょう。出来ればアナログで。