背景の描き方制作工程公開【初心者向け】線画、彩色すべて【画像付】

背景 描き方 手順

こんにちは、彩玉です。

ここでは、背景の描き方の制作する工程を、白紙から線画、彩色を経てどのように描き進めるれば良いのか、↑上の画像を実際に制作した工程で画像を使って解説します。

初心者向けの描き方紹介ですが、目的は仕事用の背景の描き方です。好きに描いていきたい方向けではありません。

 

テーマの考え方、シミュレーションの大切さ、資料の集めすぎないコツ、線画での重要な構図、彩色のやってはいけない注意点、早く仕上げるテクニック、完成後の調整の大切さまで、経験談含めてご紹介します。

 

これから背景を描こうとしている初心者の方、仕事にしていきたい方、何を目的に描いたらいいのかわからないという方は、ここの制作工程を順番にこなしてもらえれば、テーマのしっかりした、仕事につなげられる背景が、短い時間で描けるようになっていると思います。

 

先のお伝えします。

Photosopを使った細部の描き込み方ではなく、きれいな背景の描き方でもありません。

考え方、テーマの大切さ、好ましくない絵作りのポイント、NGなど、背景を制作する上での一連の流れ紹介です。

 

また、ここでの解説は、背景に限らず、イラスト、同人、ポスター、ジャケットなどの制作にも役立つ、失敗しないための知識となりますので、自由に描きたい方、仕事とは考えてない方には向かない内容です。

 

背景業界歴24年、背景講師歴17年の経験をどんどんシェアしようと思います。

 

【使っているデジタル描画ソフトと作成機材】

PC = Windows 10

デジタル描画ソフト = adobe Photoshop 2020

作成機材 = ワコム液タブ13インチ

 

この背景ではありませんが、Photoshopを使った実演動画は、Youtubeの背景ラボに上がっていますので重ねてご覧ください。

 

背景の描き方制作工程

背景 描き方 手順

 

背景の描き方の制作工程は、仕事、特に職種によっては様々で一言では言えません。

 

ここでの紹介は、オリジナル背景を自由な題材で描く為の流れで進めていきます。いわゆるコンセプトアートと言われる、ゲーム系やアニメ系の背景グラフィックデザイナー職につながる背景制作工程です。

マンガや同人ではありませんが、作り方は同じで内容はとても有益です。ぜひ最後まで熟読され、少しでもクオリティーアップにつなげてください。

 

背景制作は以下の工程で描いていきます。

  1. テーマを決める
  2. 物語をイメージしたシミュレーション
  3. 資料用意
  4. 線画ラフ(美術設定のラフ)
  5. 彩色ラフ(美術ボードのラフ)
  6. 仕上げ
  7. 最終チェック
  8. 完成

1~3が描く前段階、4~5が構想を具体化していくラフ制作、6~8が本制作

 

上記をもとに描いたのがこちらの背景です。

コンセプトアート① 完成

  • テーマ : 人の為に働いた従順ロボット。古く使い物にならなくなって捨てられた悲しい物語
  • 制作時間 : 9時間前後
  • 使用機材 : Photoshop 2020/ワコム液タブ13インチ
  • 描いた理由 : 従順ロボットを物語にしたかった。当初は暗い廃墟の片隅を表現したが、完成するにつれ悲しさがまし、せめて絵の中だけでも日を当ててあげたくなってこの形(最初のイメージは後で紹介します)

 

では、手順を紹介します。

 

まず、背景制作のスタートは物語から作ります

 

実は、これは皆さん意識をせずとも自然とやっているはずで、描きたいものを中央に配置したことが、すでに主役と脇役を作ったことになっているんですね。

それを、何となくではなく、前後の物語の起承転結まで考えた上で、1シーンを切り取る形でテーマを作り込んでいきます。物語を面白くする必要はありません。

 

そこで描き始める前の、とても重要な3つの工程を解説します。

 

  1. テーマを決める
  2. イメージシミュレーション
  3. 資料用意

 

作品をヒットさせるには企画より企画意図が大切”と言われます。やみくもに描きたいものを描いてもそれは商用にはならず、「お客様の要望あってこその商品です」という、結構奥深い話です。

 

そして、すべてにおいて一番大切なのが1のテーマです。

 

テーマとはなにか

 

少々難しいので簡潔に解説します。

例えば、この2枚、左側は明らかに入道雲を主役とした物語で、右は入道雲より晴れた夏空が主役ですね。

物語としても、左は入道雲が絡む、常夏限定でありそれ以外は当てはまらない作品ですが、右は青空ですので、晴れた日の物語で期間も余裕があります。

背景 入道雲1 アニメ

背景 入道雲2 アニメ

これにタイトルがつけれれば物語も完成します。

まだ今一ピンとこない方は、検索だと思ってください。

この2枚、入道雲で検索すると左が出てくると思いますが、もし雪化粧がヒットしたら二度とその検索は使いませんよね。これがテーマです。

 

この動画はテーマに限らず、最後まで制作する上でとても重要な内容をアップしています。ぜひ一度ご覧ください。

▽【背景制作優先順位ベスト5】背景はこんなことを気にしながら描いています▽

 

 

 

ということで、さっそくテーマ作りへ移っていきましょう。

描く前3つの工程その①_テーマを決める

テーマを決めることは作品作りの中で1番大切とお伝えしました。それは背景の静止画であっても同じです。

やり方は次の順で決めていくとスムーズに作り上げることが出来ます。

 

  1. 物語
  2. 訴えたいもの(主役)
  3. 演出

 

これを今回の背景をあてはめてみますと、

  1. 物語 : 人の為に働いた従順ロボット。古く使い物にならなくなって捨てられた悲しい物語
  2. 訴えたいもの(主役) : 従順ロボットの末路、壊れた鉄くず、錆
  3. 演出 : 悲しい1シーン、忘れ去られたゴミ捨て場、暗い場所、柔らかい光

こんな感じになります。

 

もし先に2の主役や3の演出が浮かんできた人はそこから作っても大丈夫です。しかし必ず物語を作るようにしてください。

  1. 主役にしたいもの=壊れて錆びたロボット
  2. 演出=雪の中の廃墟でリアル系、暗闇の和室でアナログ風、夕景に染まる近未来で3Dっぽく、学校で子供向けなど

 

もっと細かく作り上げるのも良いかと思います。演出好きにはたまらない過程ですね。例えば、5W1Hや起承転結が作りやすいのでお勧めです。

 

【5W1H】

  • When(いつ):現代※天候や季節も考えれると尚良い
  • Where(どこで):工場の片隅
  • Who(だれが):人
  • What(何を):働いていたロボットたち
  • Why(なぜ):用がなくなった
  • How(どのように):捨てられ放置された

 

【起承転結】

  • 起:人が楽をするため、従順な働きロボットを作った
  • 承:朝昼晩と一時も休まずロボットたちは命令されるがまま働いた
  • 転:時代が進み、新たな技術が生まれ古いものは追いやられた
  • 結:身勝手な人間たち、新しいロボットが次々と生まれ、古いロボットは抵抗することもなく工場片隅に捨てられ放置された

 

ここまでやっておくと目的がはっきりしている分描く時間がとても早くなります。

 

テーマまとめ

1、物語は必ず作る

5W1Hや起承転結が作りやすい

 

2、訴えたいもの(主役)を作る

背景では、雪化粧、夕景、火事、地球など。キャラクターではロボット、人物、動物

 

3、演出

次のシミュレーションにもつながる大切な設定決め。廃墟のリアル風で暗闇の中にさす寂しい木漏れ日の中など

 

 

このテーマから出てきた案がこちらです。線画ラフの段階ですが、次のシミュレーションがここを作りますので次もしっかりこなしていきましょう。

 

↓この物語の線画ラフ、これに色を付けていきます↓

ロボット 設定 線画

 

 

描く前3つの工程その②_シミュレーション

シミュレーションは、その①の文章だけで組み上げた物語を、頭の中で絵作り、描く直前まで行う工程です。

線画とカラーでは同じ物語でもイメージが変わるので、目的に合わせた最終形態までシミュレーションしておくと失敗がなくなります。

 

やり方は次の順で進めます。

  1. 構図、アングル
  2. 色付きで具体化

 

まずは、構図、アングル

構図とは、パース(1点透視、2点透視、3点透視)を使って、カメラワークを作ることを言います。アングルは見上げたアングル、見下ろしたアングルといい、見た目のカメラ用語です。

ここでは色のことよりも配置見せ方にこだわりましょう。

 

今回の構図案は次のようにしてました。

”普通のごみ置き場のような見放された場所に、無残に放棄されたロボットと雑草交じりの廃墟の片隅”というイメージで、あえて壁に対面した一点透視の構図。

 

構図、アングルは少々経験が必要になるので例をいくつか記述しておきます。

  • 気持ちよく羽ばたく鳥を見ている=空を見上げたアングルで縦長
  • 廃船を発見した冒険家=引きの絵で小さい冒険家と大きな廃船が、手前と奥に並び、大きさの比率を冒険家目線で説明した奥行を感じる配置
  • 学園ラブストーリー=学園校舎をバックに正門と桜を配置した縦長のポスターサイズ

 

次に構図・アングルを色付きで具体化

難しく考えず、完成の雰囲気を想像すれば大丈夫!私は結局ここが甘かった為、完成が変わりましたが。。

当初シミュレーションしたのは、暗い廃墟の片隅に天井に空いたの小さな穴から漏れた木漏れ日が、主役をうっすら照らし出した暗めのシーンを作ろうとしていました。(彩色ラフで紹介します)

 

しかし、完成するにつれ悲しさが増し、せめて絵の中だけでも日を当ててあげたくなって、結果明るくなりましたね。

 

私は描いている最中、絵の中の物語と一緒に時間が経過するんです。昼を描いていて数時間後夕方へ変更していることもあります。

 

では実際に行ったシミュレーションを紹介します。構図ではなかった、光源、明るさ、細かい苔などの詳細を入れ完成の想像を強化していきます。

工場敷地内の隅、ほぼ人が訪れない見捨てられた場所にロボットを主役にしたかったので一点透視の構図にし、草やほこり、錆、苔に覆われ、何年も放置された横長のシーン。草や苔をどれだけ描くかで季節を少し調整。

光源を右上とし、主役のロボットの顔に穴の開いた天井から漏れた光が優しくかかる(←これは結局変わりました)悲しさを前面に押し出した廃墟の1シーン

 

 

シミュレーションまとめ

1、構図、アングル

線画に集中し、主役の配置から映画の1シーンを作る

 

2、色付きで具体化する

光、方向、影、質感もプラスし、演出を具体的に静止画にしていく

 

 

次は描く前最後の工程その③、写真資料を揃えましょう。

 

描く前3つの工程その③_写真資料準備

 

写真資料準備は一番最初の勉強法です

 

資料収集は勉強も兼ねれます。一般教養は教科書から知識を得ますが、背景の勉強は写真資料です。資料収集することで、自然と新しいことを覚えつつ、目を養っていけます。

 

ここで集めた写真資料は以下の各1種類ずつになりました。他、苔とツタも。

  • 主役のロボット用資料=ドラム缶や鉄板の錆び、ロボットの形状(ガンダムやトランスフォーマーチェック)
  • その他脇役資料=廃墟の壁、雑草、苔、ツタ、ほこり

写真資料収集は出来れば自分で撮った写真を優先します。ネットを活用する場合は無料で使えるところ、例えば写真AC等を使いルールを守って使いましょう。違法ダウンロードはしてはいけません。

 

背景 廃墟 素材

 

 

資料収集で失敗しないポイント

資料は集めすぎない!

 

え?と思うかもしれませんが、これには2つの理由があります。

一つは、集めることに時間を割きすぎて気づくと数時間たっていたなんてことがあります。時間がもったいない。これ素人の人のあるあるで結構な落とし穴ですよ。

 

もう一つがかなりの曲者。

数パターンの見本を見ていると中間をとりたくなるんですよね。数時間程度なら大丈夫なんですが、数十時間作業すると気づけばどっちつかずとなり、中途半端な背景が完成していきます。2頭追うのはやめましょう。

目移りすることが作業の妨げになるので、テーマ同様しっかり方向性を決めて収集するのが大切。

 

 

【ネット検索について一言】

ネット検索はみなさん頻繁に使うと思いますが、今では誰でも無料で書けてしまうものなので、初めて訪れたサイトは記事を書いている人を必ず調べましょう。

私は美術監督経験者です=プロフィール

 

写真資料準備まとめ

1、資料は必ず集めよう

資料収集することで、自然と新しいことを覚えつつ、目を養っていける

 

2、資料は集めすぎない

使わなければ時間の無駄、そして目移りし中途半端になる

 

 

ではいよいよ作成です。

 

描こう!線画ラフ_これが美術設定のスタート

線画ラフ 美術 設定

ここではテーマで決めた”訴えたいもの(主役)”から配置し、構図とのバランスを整えながら物語の1シーンを見える化していきます。線画ラフをしっかり説明まで描き込んだものが美術設定です。

次の彩色ラフにつなげる大事な工程で、シミュレーションしたテーマを初めて絵にする、今後を左右する重大な役割が線画ラフです。

線画の終着点は2つあります。

  1. ラフ画目的で、最後には使わない原図(※ここではこちら
  2. 美術設定目的で、線画だけで報酬が発生するクオリティーの高いもの

 

Photoshop内でのことですが、描き始めは同じです。しかし美術設定が目的だった場合、線画もレイヤー分けを考慮します。次の彩色のことも考え、白で塗り分けることもあります。

  1. 線画ラフのみ(※ここではこれ
  2. 線画ラフ+レイヤー分け
  3. 線画ラフ+線画清書+レイヤー分け+白塗り

 

3にいくにつれ、制作時間が大幅に増え、また、線画だけで細部の形まで説明が必要が出てくる為、かなりの勉強量と時間が必要になります。よほどのファンタジー作品でなければ、現実世界をまず知り、そこからデフォルトして作り上げます。

3のような場合、資料収集までもどり、時代背景から製造工程まで調べ、調合しながら現実の造りをファンタジーに持っていきます。

 

少し話がそれますが、調べる深さ、こだわりが分かりますので是非読み進めてみてください。

 

例えばこんな発注が来たとします。

 

昭和33年の夏の東京街並みの設定を描いてください。

 

東京街並みの依頼ですので、やはり特徴を忍ばせたいわけですが、昭和で東京というと東京タワーを描きたくなりますね。

 

ここで調べるということが大切で、資料収集が勉強になります。

 

昭和33年という依頼ですから、その時代の特徴は取り入れてほしいという発注で、ファンタジーではない美術設定を求められます。

東京タワーは昭和33年12月23日竣工(wikiより)ですので、昭和33年夏は建造中にあたりますよね。今の東京タワーは描けないんです。看板も右読みだったり、洋服は描いて大丈夫なのでしょうか?

 

そのあたりもご自身で確認を。良い映画ですよ! = 2005年上映日本映画「ALWAYS 三丁目の夕日」

 

ではいよいよ、線画の作成に移りたいところなのですが、ある程度サイズも予定に入れておきたいところですね。

 

そこで、仕事でも趣味でも一般的に必要とされているデジタルや紙のサイズを紹介します。テーマから当てはめて作っていきましょう。デジタル作成は後で変えれますのでざっくりで大丈夫ですよ。アナログ制作ではしっかりと!

 

一般的サイズ、3パターン

  1. PCモニターやTV用 : 横長16:9、横4000px(4K)が大きすぎず小さすぎず。※2020年現在
  2. 雑誌、ポスター、同人 : 用紙サイズ企画のB5やA4、見開きでA3
  3. iphone、ipad、androidは縦横の幅が変わる上、機種によってサイズが違う為、あくまで一例ですが、16:9横長で作成し、短くなった場合(携帯を立ててみた場合)の範囲を4:3等で主役が切れないように工夫します。

 

作成時の注意!

縦横、数センチはフレーム内側を想定し、ぎりぎりまで物語に入れるのはやめましょう。
また、正方形も絶対に×

 

では、サイズも決まったところで大まかなあたい取りから細部へと描き進めます。

 

大まか=影と地面の境目と、積まれたロボットの横と高さの幅、ぽろぽろと散る破片と壁の余っている隅にツタの配置

細部=ロボットの顔、胴体から形不明の鉄くずの配置と形、雑草の高さや種類、壁の亀裂と汚れ

 

今回は”目の引かせ役”のロボットの顔に柔らかい光をあてる、と最初に決めていたので、中央少し左にある正面向いたロボットの顔から描き始めました。

線画ラフ 美術 設定

 

きれいに中央配置をしてしまうと、このロボットだけ別の物語があったように感じてしまうので、従順なロボットたちという仲間意識自然と放置されたという雰囲気にするように、中央から少しはずした左に描いています。

 

制作時間の分配は、主役に5割、脇役に4割、残り1割くらいで描きました。

 

線画ラフまとめ

1、終着点を決めておく

線画ラフが目的か、美術設定が目的かで詳細資料と描き込みが必要となる

 

2、サイズも考えておく

大幅にサイズを変更するということは、ほぼ構図から決めなおしになってしまう。この後の彩色にも完成度の不十分さが出てきてしまう為、用途に合わせたサイズを作っておく

 

3、描き始めは大まかな配置から

主役とその脇役次第で絵は決まっていく。ロボットと壁や草の配置が大切

 

 

描こう!彩色ラフ_これが美術ボードのスタート

彩色ラフ 美術 ボード

彩色ラフ 美術 ボード

彩色ラフ 美術 ボード

 

ここでは、線画ラフを参考に彩色をしていきます。初めての色付けで、完成形がはっきり見えてくる大切な工程です。これが美術ボードです。画面映りへの印象が決定しますので、気に入るまで何パターンも作りましょう。

 

実際に行った作業工程、レイヤー分けと描いた順

まず、線画ラフをPhotoshopのレイヤーパネル一番上に乗せ、描画モードを乗算に変えて透けるように準備します。そのレイヤーの下に、素材ごとのレイヤーを分けながら増やしてざっくり色付けしていきます。

最初に分けたレイヤーは以下の感じです。ついでに質感の雰囲気も入れていきます。

  1. 壁 → 軽く汚れや傷
  2. ロボットの全体 → 簡単な錆や汚れ、光源に合わせた明度
  3. 雑草とツタ → 明るい葉から暗い葉の位置を最初描きます。細かい形は仕上げで行います。
  4. 光の調整3パターン

 

彩色ラフポイント!

絵作りは映像づくり。画面は照明さんのライティングが命です。後で説明します。

この段階では先に雰囲気を作る為、隅まで一気に塗ります。デジタルになってもアナログの地塗りは健在です。

アナログの地塗り=水浸しにした紙を、乾く前に一気に全部色を置くこと。

 

▽この動画は地塗りのみで完成した例、実質6分程度▽

 

 

彩色ラフとは言え、仕上げ一歩手間ですから、ある程度色付けが終わったら、主役の描き込みを増やしクオリティーを調整します。

同時に、大まかに分けて描いていたレイヤーも詳細分けにしていきます。光と影だったり、コケと錆だったりと仕上げを予定して細分化していきます。この辺りはPhotoshpの描き方になるので省きます。

 

常に主役から脇役を意識した映像づくりを念頭に置き、光を演出して線画ラフ以上に完成に近づけます。

線画と大きく違うのはライティングです。映像づくりにはなくてはならないもので、人の目を引き付け、物語の重要人物を際立たせます。

 

ライティングのポイント!

自然光か、スポットライトか、フットライトか、なしにするかはしっかり決めましょう。また、暖色、寒色、中性色も調整し、主役は暖色を強調するなど、目立たせることに努力しましょう。

彩色ラフのNGはライティング次第

専門的になるのでNG①NG②を用意しました。

 

人の目を引き付けたり、わざと見せなかったりと、映像には物語だけではなく、多くの技術が組み込まれています。これを構図学、色彩学で演出します。

彩色 手順 注意

彩色ラフ_NG①

彩色 手順 注意

彩色ラフ_NG②

 

こんなCM、見たことありますよね。これはNGではなくあえての演出です。彼、目立ちますよね。

彩色 手順 注意

 

 

彩色ラフまとめ

1、レイヤー分けと全体の色塗り

素材ごとにレイヤー分けをしつつ質感を入れる。全体をいっぺんに塗る、地塗り工程が大切

 

2、色塗りの演出はライティング

映像づくりはライティングがとても重要。人の目を引き付け、主役を際立たせてこそ映画作り

 

 

 

描こう!仕上げ(主役から)_8割完成目指して

背景 描き方仕上げ

ここでは彩色ラフを完成に持っていきます。デジタル制作は同時にレイヤー分けをしますので、データ管理というテクニックも必要となってきます。

 

実際に仕上げた順番と工程を先に紹介します

  1. 中央にあるロボットの顔から、周りのロボット、胴体、形のわからないロボットへと、大切なものから順番に形、苔、錆を描き込んでいきます。
  2. 壁の汚れ、剥がれ具合を主役ロボットに絡めるところから、左右へ描き進めます。縦タッチは雨の影響です。
  3. 草は中央の明るい葉から描き進めます。ロボットや暗闇にかぶせるように描くと目立って完成が見えてきます。

主役から脇役の順になっているはずです。

 

仕上げを早くするためのポイント!

  • 仕上げは必ず主役から
  • 時間配分と完成度:主役に5~7割、脇役2~3割、残り1割くらいの時間配分と完成度でいきます。
  • 8割程度全体を完成に持って行った後、再度主役に戻るを繰り返します。

 

これには理由があります。

  1. 人は90分単位で集中力が切れていく
  2. 短い秒数で作られるアニメの背景は、主役が完成していればとりあえず上映が出来る(常に完成状態)
  3. 主役を最後に回すと予定した時間内では絶対に終わらない

 

完成までの予定を立てれば、逆算で主役にかけられる時間が出てきますよね。身近な目標を区切ると集中力が出てきますし納品に間に合います。そこまで考えれると仕事としてやっていけますね。

 

目標の立て方ポイント!

”90分やろう”ではなく、”ここを90分後までに終わらせる” です。

 

背景 描き方仕上げ

 

主役が終われば作品の半分は終わりです。

脇役は主役ほどかけず、クオリティーも抑えれます。しっかり計画を練れば間違いなく時間通り作成していけます。

慣れてきたならば、同じ質感、同じ形、同じ色は同時に仕上げてしまいましょう。常にライティングを意識してくださいね。完成度の高さ、スピードが同時にこなせます。

 

背景 ロボット 仕上げ3

 

脇役が終わると完成しているはず、、、なのですが、脇役の描き込み次第では主役の見え方が変わってきます。

 

ここではロボットの色が少し重めで重量感が出てきました。また、雑草の高さを増やした為、彩色ラフ当初の壁だと地面やロボットとのギャップがありすぎましたね。

そこで、壁の汚れの量と境目の位置、ツタを増やしバランスを取りました。(上図仕上げ③がバランス調整後)

 

仕上げ時のNGは仕上げる順番にあり

背景 描き方 間違い

 

仕上げまとめ

1、主役から仕上げる

絵は主役が終わらなければ一生完成しない。逆に主役が終わっていればそれは完成している

 

2、主役に描ける時間は5~7割り

完成具合も100%よりは7割程度で脇役へ進める。時間節約はプロの証

 

3、常にライティング

彩色ラフから意識したライティング、ここが一番の見せどころ!

 

 

最後は必ずバランス調整

背景 描き方 バランス

 

時間に追われると見落としが出るため、最後一呼吸おいて全体のバランス調整をしましょう。私は改めて日を置くこともあります。最後の指差し確認ですね。

 

ここで実際に行ったバランス調整

  • ロボットの色が濃く、また、錆が強かった為、リアルで重々しすぎてしまった。色を取り、錆を調整しました。
  • 雑草とツタの量に差がありすぎて、湿気量というか、付近の水分量に統一が取れてなかった為、ツタを増やしました。
  • 入射光により演出が暗すぎた為、コラボさせながら物語を大きく変えました。最後に紹介します。

 

全体を見るためのコツ!

少し画面から遠ざかるか、サムネ効果といって縮小したり、白黒にしたり、また左右反転なんてのもバランスをとる方法です。

 

自分の絵は愛着がわき、間違っているとは思っていないので、「光の方向逆だったー」なんてこともしばしば。

 

画面を遠ざけると、人の目は立体のほうをよりよく見えるようになります。油絵を遠くから見たとき、とてもリアルに見えますよね。あれは面をしっかり描いてある証拠です。近くに寄るとざらざらでこぼこ。

質感が見えにくくなると細かいことに目を奪われず、全体の雰囲気が見えてきます。

そこで色彩ラフの3パターンをコラボさせたり、光の方向変えてみたりと全体の光の調整で、見せる場所をさらに誘導させ今回の背景制作は終了です。

 

光を調整するときのポイント!

暗い中に光があるとかっこよく見えます。そのためどんどん発行させてしまいがち。光らせすぎると質感が消せる為、安易で安っぽい背景になるのでほどほどにしましょう。

 

最初の物語づくりのところでも描きましたが、当初は彩色ラフ①にするつもりでした。

 

彩色ラフ 美術 ボード

当初のイメージ、彩色ラフ①

 

しかし、最後のバランス調整をしていくうちに、絵が絵なだけにロボットがとても悲しく見えてきたので、せめて光の中に入れてあげようと、彩色ラフ③へ変更しました。後は廃墟感がもっとほしかったので乾燥とほこりを演出し完成です。

コンセプトアート① 完成

 

 

バランス調整まとめ

1、改めて全体を見つめなおす

長時間の作業で見落としがちな絵作りを画面を小さくする、遠ざけて見るなどして見つめなおす

 

2、シミュレーションでは感じれない違和感

完成に近づくと、頭で作ったシミュレーションが思わぬ方向へいく。最後は完成度も考えて、時には物語を捨てることも勇気

 

 

結論まとめ

オリジナル背景、コンセプトアートを制作するときは、描く前の事前準備がとても大切です。

そこには必ず「タイトル」がつけれると思います。常に物語を意識しつつ、ライティングで絵を作っていきましょう。

 

  • テーマを決める
    • 物語から作る。5W1H、起承転結で静止画でも映画づくりで考える
  • 物語をイメージしたシミュレーション
    • しっかり主役と脇役を作り、光、方向、影、質感もプラスし、演出を具体的していく
  • 資料用意
    • 習得も兼ねて必ず揃える。ただし、揃えすぎないこと
  • 線画ラフ(美術設定のラフ)
    • ”訴えたいもの(主役)”から配置し、構図とのバランスを考え想像を見える化していく
  • 彩色ラフ(美術ボードのラフ)
    • 主役から脇役の順で色を付け、ライティングで舞台を演出していく
  • 仕上げ
    • 主役から全体の5~7割の時間を当てて先に仕上げる。”90分やろう”ではなく、”ここを90分後までに終わらせる”
  • 最終チェック
    • 画面を遠ざける、サムネ効果を使う、または左右反転といろんな角度からチェック