アニメ背景とゲーム背景、大きく違うかと言うとそうでもありません今は。
アナログが主流だった数年前に比べればアニメ背景も今やゲームで使える表現が多く見受けられます。
それでも注意するべきところがあります。それは画面に映っている時間(秒数)の違いと艶などの質の映り方にあります。
時間(秒数)に合わせた描き分け
この時間(秒数)というのは趣味で描かれている方には縁の遠い表現ですね。これはどういうことかというと、1秒と10秒では描き込み具合が違うということです。さらにキャラが載るものとBGオンリーのものも違う描き方をします。TV、劇場映画も違います。
これは業界独特な描き方ではなく、人の目に合わせ最低限のクオリティーで終わらせるという仕事の絵に執着する方法です。
一瞬しか見えない背景に10秒の描き込みを入れるならその分枚数をこなせということです。
“描けてる人と描けてる風の人”でも説明しましたが、面の明暗が第一ですので一瞬だけの背景でも明暗は絶対に描きます。そこから秒数が長くなるにつれ質感をリアルにしていき画面隅に向かって描き込んでいくわけです。
一瞬ならばキャラの顔しか見ないのでその周りの背景。それが映写時間とともに周りや奥に目が入っていくので人の目に合わせた描き込みをしていきます。
こちらの絵を見てください、写実的に描いた背景です。初めて見る人はごく普通に見える背景だと思います。
次に下の3つを左から順に見てみましょう。
最初に縦フレームの金シャチはあの大きさ、構図だったから違和感がないものに見えます。でもそれも数秒です。それを仮に1分時間を与えて見れば奥の金シャチに気づくのではないでしょうか。
これがいい意味での手の抜き方で、作品や秒数によって描き分けるということで、全部描けばよいというわけではないのです。
これが実はアニメ背景とゲーム背景の違いにとても結びつきます。
アニメーションはこちらで静止させない限り止ることはないものです、逆にゲームはストーリーを進めない限り静止します。特に立ち絵と呼ばれるものは台詞だけパラパラと進み、キャラと背景は静止したままです。クリックしなければ永久にそのままです。
ゲームは写っている時間が決まっていない為細部まで描き混む場合や、描きこまないにしろ塗り残しやはみだし、紙の質、リアリティーに正確さが求められるのが特徴です。
立ち絵どころではないゲーム、例えば○○ファンタジーやモ○ハンなど動かすことを前提に作っているゲームはもう職種が違うといってもいいですね。ごくまれに素材を描くことがありますが当然3D空間なのでパースを付けない絵を提供したり、奥のほうでまったくゲームキャラとは絡まない部分だったりとあくまで動かない絵を素材として提供します。
2Dデザイナーと3Dデザイナーはまったく違う業種と思っていいのではないでしょうか。
艶などの質の映り
[映りの説明の前に前置きにお付き合いください]
背景はどんな仕事でもキャラクターのことを考えて作業します。キャラクターを超えてはならないからです。
超えるとはどういうことか
それは例えばかわいいキャラクターの作品にリアルすぎる背景を描いてはキャラクターよりも主張してしまいキャラがかすむということです。
下は3枚とも同じキャラクターが載せてあります。一番右だけが良い背景です。
なぜ背景がこんなことを考えなければならないのかを説明しますと次の3つが当てはまります。
1、業界ではキャラと背景は同時進行にもかかわらず別会社で制作することが多いということ
2、そしてキャラが先に決定→背景作成という順が一般の流れであることからキャラの色変えが出来ないということ
3、キャラは動き背景は静止するということ
3が解りにくいので少々説明。
キャラが動くということはグラデーションという技術力の差が出る曖昧な表現を入れれないのです。なぜなら動くたびにその微妙の差がスムーズに見えなくしてしまうからです。3Dで作れば解決ですね。
それら業界の仕組みを組み、背景が微調整を取り、キャラ(完成アングル)を意識して作業するというわけです。
前置きが長くなりましたが、アニメ背景、ゲーム背景だからというよりはアニメキャラ、ゲームキャラだから背景もそれに合わせてと思ってもらえれば、艶などの質の映りで背景も違うことが分かってもらえるのではないでしょうか。
絵で見てみましょう。
これは背景がアナログで描かれているためですが決してアナログがだめなわけではありません。ただしキャラがこうなっている以上それに合わせて背景も描かなければならないのでデジタル作成か修正をして調整するわけですね。
地デジへの移行とゲームのハイクオリティー画像、そして何よりデジタルの普及でキャラが先にデジタル塗りになったので背景もデジタル作成(効率化も)になりアニメ背景とゲーム背景の違いが今ではさほど見受けられなくなったという結末でした。
2Dと3Dを考える
最後に2D作成と3D作成に触れてみましょう。
2D背景はSAIとPhotoshopを使用しますが3D背景は3DMax,shade、MAYAなどを使用すると言われます。
3Dがよく解からない方のために少し説明します。
極端ですが、大きくわけてしまうと2Dは静止画、3Dは動画と思ってください。
ということは「アニメは動いているから全部3Dなの?」と思われてしまいがちですが、それは違います。
アニメが動いているのは、静止画を一枚ずつ撮影して動いているように見せてるわけで、あくまでも描いているのは静止画です。
これを3Dソフトでつくると、一体の人物だったりを作り動きのモーションを読み込みPC内で秒数分設定すれば自動で動いてくれるという仕組みです。
一枚ずつ描いているか、一物体を動かしているか違いは明らかです。
ではなぜ2Dと3Dを使い分けるのでしょう。全部3Dでやったら楽でしょうにね。
まさにその通りなのですがそうも言ってられません。またこれもざっくりですが理由は2つ。
1、描いたほうが早い場合が多い
2、お金
例えば、1シーンの数秒しか映らない映像なら描いたほうが断然早いですよね。これを3Dで作ると、1シーンとはいえ背景を作り、キャラを作り、モーションをあてます。大して動かない映像でも作る工程は一緒なのです。
変身シーン、オープニングやエンディングのように毎回使いまわすようで且つ重要なもの、クルクルまわりながらアングルが変わったりと動きのある動画は3Dにしたほうが効率がいいのは解かりますね。
ここまでの説明がお解かりいただければ背景も2Dでいいのか、3Dが必要かが分類できます。
アニメ背景でもゲーム背景でもアングルが極端に変わらなければ2D静止画で描き、動かしたりアングルが変化する背景は3Dでなくては無理があります。
このように2Dと3Dがアニメとゲームで分類されるのではなく、用途によって便利な方法を使用しているということになります。
【余談】
もしこの記事を読んで就職を考えたり、興味を持って実践しようと思われた方がいましたら次のことを考慮されるとよいかもしれません。
最初のほうでも書きましたが2Dと3Dはまったく別の業種とおもってもらったほうがよいでしょう。
画力が必要になるのは同じですが、制作工程、考え方、完成度、学習内容全部違います。
例えば箱が置いてある部屋の絵がほしいとしますね。すると次のようにします。
2D(Photoshop)の場合=上からの光と考え上面を明るく、側面、影面を床の上に置いてるように描く。
3D(3DMAX)の場合=横へドラッグし面積を決め、次に縦にドラッグし体積を決めます。ライトを蛍光灯など選び設置場所を決め、光の方向をドラッグし、数値で強さを入れます。同じように床も作ります。
見て解かる通り、描くと作るの違いは明らかです。
ソフトやPCスペックもまったく違うのですが、いざ学習しようとすると2Dはとことんデッサン力で補えるものが3Dは光の種類から正確な寸法、質感等々、美術と数学くらい違うと思っていいのではないでしょうか。
当然2Dも寸法や質感表現は必須ですが筆のタッチがいい感じだったとかその場のノリで描いたように見えたとかなんとなくいい味というものが作品に組み込みにくいのが3Dになります。
もし進路で迷っておられる方は自分の性格、やる気、夢をしっかり見つめ直し作業工程も視野に入れた職種を考えるといいかと思います。