こんにちは、彩玉です。
ここでは【影の描き方_基礎編】に引き続き【影の描き方_応用編】です。基礎編で止まってしまうと恥ずかしいことになるので必ずこの応用編のご理解をお願いします。
説明は透視図法(パース)をある程度理解していて、さらにこの講座の基礎編を読んだという方用に説明しています。最初から応用編で理解できるなら基礎編は読む必要ありませんが、言い回しが分からなければ辿ってください。
基礎編はこちら = 影の描き方_基礎編 |
【今回も前置き※重要】
透視図法を説明している本やサイトはいっぱいあります。どれも意味は同じで理解は出来ます。ただ絵の目的によってそのまま使えないのを知っておいてください。
“透視図法とは?”を説明すれば「一点に集まりますよ」、「二点になっているように見えて~」という説明であっていますが人の目では一箇所しかはっきり見えず、周りはボケ、線は曲線に見えるのが普通です。
人が見ているものに近く、出来るだけ優しく、そして力強く、なんとなく気持ちがいい、そんな絵を描きたいと心がけた場合決して一点に集めません。当然とも言えるんですが人は目が二つあるので最低二点なんです。
基礎編に続き、この応用編でもしっかり透視図法にのっとった形で説明していきますが、あくまで理解を深めるためであり、これらを経て多くのジャンルへ挑んで頂ければと思います。
さて本題に入りましょう。このコーナーの完成はこちら。
影の描き方_応用編
基礎編と応用編の違い
これが基礎編と応用編の違いです。見た目で言えば大きさがちょっと違うかな~くらいでしょうか。この微妙さはパースが分かる人から見れば一目瞭然。
「たいしたことないじゃん」「基礎編でもよく見える」という声が聞こえてきそうですが、絵としては左の基礎編でも大丈夫だと思います。ただし、これをやり続けていると理解は不十分であり、少なからず就職は出来ないと思います。そこまでこの二つには意味の違いが出ていると思ってもらえれば遣り甲斐も沸くのではないでしょうか。
縦長にし影の距離を奥へ伸ばすと違いがはっきり分かりますね。
む・・・意外と大きさ以外わからないような。
『なぜ応用編が正しいのか』意味を知ることが重要で、基礎編とは描き方が全く変わってきます。
ではどうすれば正しい影が描けるのか。それは、
パースの再確認
⑦基礎編で説明しましたが影は結局光が当たってる面がどのような形跡を辿って地面に落ちたかでした。
⑧長方体ですと、上面と底面は同じ面積ですがパースを入れるとでこんなに違う形に見えるんですね。
⑨さらには底面と落ちた影は奥行が違います。ならば全部違う場所にあることになるので、逆に同じ大きさに見えることのほうが違和感なんです。
辺ごとに消失点を分けてみると。
⑩右の消失点
⑪左の消失点
⑫影の方向の消失点
問題はこの『影の方向』です。どの棒を地面から伸ばしているかで変わってきます。手前の棒を伸ばしてもいいですし、「奥の棒としてやってみよう」でもいいと思います。今回は一番手前の棒で描きました。その方向を延ばしアイレベルと結ばれたところが影の消失点として次から説明していきます。
応用編で実際にやってみよう
⑬箱の消失点はこちら。二点透視ですので縦線はすべて垂直です。
⑭まず『影の方向』を引きます。このとき手前の棒を基準とし、ここだけは『影の方向』と平行に引きます。
⑮アイレベルとぶつかったところを消失点とし、残り3本も消失点に向けて引きます。ここが基礎編と大きく違うところで『影の方向』と平行ではだめなんです。
⑯次に基準としていた手前の棒の頂点を『高さ』で平行に落とします。『高さ』で落とすのはこれが最初で最後です。基礎編では4本の頂点を落としましたがパースに乗せるため他は落としません。
⑰落とした頂点の影から今度は箱の左右の消失点へ繋げます。すると『影の方向』の線とぶつかっていきます。
⑱繋ぐ場所を間違えないでくださいね。分からない方は基礎編の頂点を落としたところを復習してください。
⑲これでパースに乗った上面の落ちた影が完成しました。簡単ですね。出来ることなら、落ちた影もパースが正しく表現されているか修正しつつが理想です。描いていくとどんどん狂ってくるものなので床のパースを見つつです。
⑳あとは必要なところを結ぶだけ。完成です♪
基礎編から続きここで初めて正式な影の落とし方完了です(笑
基礎編と応用編の違い実証結果
基礎編のやり方で描いてみたので違いを比べてみましょう。
基礎では『高さ』と『方向』はすべて平行に引き、それぞれの頂点がぶつかったところを結べば完成でした。しかしそれでは地面のパースを無視したことになるので今回のように応用編でやるのが正解です。
応用編の応用にチャレンジ
【こんな場合はどうしましょう】
実際はこれらを頭の中で描いていくので作業時間は大して変わりませんが、応用編のやり方だと基礎よりだいぶ面倒なことになります。実際にやってみましたのでご覧ください。
21,小さな箱の曖昧な位置関係を説明する必要がある為、補助線を引いて地面までの箱を作ります。(いくつかやり方はありますが今回はこの形で補助していきます)
22,これによって接した「○」の位置は上面の一辺の「○」になります。
23,緑の線と青紫の線は同じことになります。これで小さな箱がどの位置に乗っているのかが正確に編み出せました。
27,『a』を取るには『b』が分からなければ正確にパースが取れません。なぜなら上でも説明しましたが『a』は奥にあるの頂点ですので直接『高さ』に合わせて光を落とすわけにはいきません。
28,まず『b』を落とし頂点を確認します。ここは基準となる垂直の辺でしたので『高さ』に合わせられます。
29,あれこれとパース線を足していくと必要である小さな箱の頂点『a』が取れます。
30,同じように結んでいけば小さな箱の上面が取れます。
31,色をつけてみるとこんな形です。余談ですがこのやり方なら宙に浮いているものも地面さえ分かれば影が落とせますね。
32,これで終わりではありません。大きな箱側の上面にも影が落ちます。この場合どうしたらいいでしょう。
33,場所が変わろうとパースを考えれば臨機応変に対応出来ます。地面がここだったと考えればいいわけです。描きやすいように地面を広げてみます。
34,前に描いた補助線に数本描けばつながります。
35,難しく考えず、地面に落ちたと思って描けば遣り方は同じです。もう説明は大丈夫ですね!
35,そんなこんなで描けました。良く見ると大きな箱の上面をはみ出してしまってますので削ります。このはみ出した部分が床に見えていれば成功ですね。
36,上面は完成です。
37,これで上面に落ちた影『36』と、大きな箱の上面の影『19』と小さい箱の床に落ちた影『31』はすべて完成で終了です。めんどうですねぇ・・・
まとめ
今回は『方向』と『高さ』を手前の棒を基準に引きました。これを奥の棒だったらちょっと違う形になります。
こういったものはコンセプトがどこまで正確に伝えているのかが重要で、紙に書かれている『方向』と『高さ』のやじるしの位置に合わせるって説明なしに解説しているのもありますし、この『高さ』や『方向』という呼び名も業界や学校で違いますので縛られないでください。
★間違って覚えてほしくないのでちょっとだけ偉そうなことを書きます、ごめんなさい。
これから絵をやる人は透視図法からやらないでほしい。最初にやってほしいのは『見てモノを描く』ということ。次に透視図法というものと照らし合わせたり、理解したりと知識を得る。
人は知識と経験が兼ね合わさって初めて技術、実力になります。解説しておいてなんですが、こんな平面上だけで理解したと思わないでほしい。むしろ完全に理解しなくても体で覚えてしまえばそのほうが正しい!正しく見せることが正しい!!たとえそれが理に適って無くても見ているものが正しいのだからそれが正しいのです。それが2Dグラフィックの面白いところで、背景やイラストの永遠に届かない最終目標だと私は思っています。
さて、本番はここからです。
「知識ではなく技術」、「習うより慣れろ」、「覚えてから描くのではなく描いて覚える」
ここまで読んでくれた方は確かに”知識”は付きました。これを”技術”にしなければ絵は描けませんし仕事になりません。
もっと技術を磨きたいという方に、練習問題を三問用意してみました。解答もありますので是非挑戦してみてください。
練習問題はこちらです = 影の描き方_練習問題