アニメ背景の就職 失敗しない志望動機、ポートフォリオ、面接トークマニュアル

背景 ポートフォリオ 詳細

こんにちは、彩玉です。

アニメ背景の就職は、ポートフォリオが勝敗を握っていると言っても言い過ぎではありません。

美術職である背景は、履歴書5%、志望動機10%、面接35%、ポートフォリオ50%の割合が妥当です。

そこで、ここでは実体験を踏まえた失敗しない志望動機ポートフォリオの中身詳細印象の良い面接トークの3つをすべて公開します。

また、アニメ背景会社の探し方も事細かく解説していますので是非参考に。

 

背景 履歴書 志望動機

背景 ポートフォリオ 詳細

背景 アニメ 面接トーク

 

また、この3つ以外、求人の見方、応募方法、問い合わせの注意、内定後にしておくことなど、アニメ業界の就職に共通する内容は別記事にて解説しています。重複するのでこちらには記載していません。手順から内定後まですべてを知りたい方はこちらも一読お願いします。

=「アニメ業界の就職の手順+未経験でもわかる探し方から面接後の研修まで

 

執筆している私は、背景業界経験後フリーランス24年兼背景講師17年、卒業生200名を超え、背景会社への就職率90%以上、そのうち第一志望合格率約80%の実績があります。

 

背景の就職は、どんなに有効な手段を用いてもポートフォリオが通らないと話をすることは出来ません。これが一次試験で面接が二次試験という扱いです。

 

ここでもう無理・・・」「就活遠い・・・」「センスがなくて・・・」と思う方がいるかも知れませんが、ポートフォリオの中身と良い作り方は知っておけば遠回りせずに済みます。

また、1次試験のポートフォリオが通ったとしても、志望動機、面接で落ちたら勿体なさ過ぎます。

 

最後まで読んでもらえれば、背景業界の難関であるポートフォリオ、志望動機、面接はクリアー出来るはずです。

 

入社さえできれば努力と根性でやっていける業界です。先輩方はめちゃくちゃやさしいですよ。

 

この後詳細をお伝えしますが少々長文になりました。しかし、最初の職種から最後の質問とお礼に至るまで、必ず面接で生きてくるので是非参考にしてみてください。

 

アニメ背景の就職 志望動機・ポートフォリオ・面接

1、アニメ背景の職種:これ、面接で使います

 

アニメ背景の職種は美術監督美術設定美術助監督(担当とも言う)、背景の4種です。

就職するとまずは「背景」として仕事をし、早い人では数年で美術監督になります。

 

  • 美術監督とは、背景トップの役職で、打ち合わせ、美術設定、美術ボード、背景制作、スケジュール管理等すべてこなします。

 

  • 美術設定とは、舞台を線画で描き起こしたものを言い、物の形、寸法、配置を正確に説明できる技術が必要となり、多くは美術監督が行います。会社によりこの専門部署の人がいます。

 

  • 美術助監督とは、美術監督のサポート役で、打ち合わせ、スケジュール管理、背景への指示出し、チェック、新人教育など多くの手助けをします。美術担当とも言います。

 

  • そして、一番多いのが背景でひたすら色を塗る作業をしています。

 

面接で、「将来どうなりたい?」「目標ある?」「先輩と仲良くなれそう?」なんてことに活用してください。

会社探しでもこの知識を必要とします。一通り目を通しておいてくださいね。下記記事【3、応募会社はそこで合ってる? 再確認しよう「エンドロール」】で説明します。

 

2、合格するために今からすること

当たり前のことですが、あえて書きます。

 

背景業界は、絵が上手でやる気のある健康な人が合格しやすいです。

 

「絵が上手」とは、最低限模写が出来ることだと思ってください。あくまで背景業界での最低ラインですよ(笑

 

新人さんの仕事は、美術監督が描いたボードの色味や美術設定に合わせて描き起こしていく作業になるんですが、それが作品模写、写真模写で判断できるんですね。見本に合わせて描ければスタートラインに立てるんです。ですので、ポートフォリオの彩色は模写が多めになっています。

ポートフォリオに関しては「提出書類②:ポートフォリオの中身はこれ」で詳しく紹介します。

 

「模写が出来れば大丈夫かも」と思ってしまいますが、同じくらい必要なのが「健康な人」なんです。

 

これを先に伝えたのは、面接でこんなことを聞かれるからです。

  • 「学校、仕事が休みの日は何をしていますか?」
  • 「何かスポーツをやっていますか?」
  • 「絵を描く以外の時間は何をしていますか?」

 

また、成績証明書を必須としている会社は出席率を見ます。これが低いと「体弱いの?」「この業界大丈夫?」と必要以上に心配され比例して内定率は下がります。

 

「え?出席足りない」「まじか、卒業ギリギリなんだけど」と思った人、多くないですか?

 

皆勤賞の人は・・・・すみません(汗

でも大丈夫です。それを今からやればいいんです。

 

アウトドア、活発的、健康的、協力的な印象になるものがいいですが、ショッピング、旅行、町ブラ、風景写真撮影、デート、ツーリング、登山、筋トレ、ウォーキング、ジョギングなど、なんでもいいんです。

インドア、不健康、病気がちというイメージになるものは控えたいところですが、嘘は一番だめです。

 

健康的なイメージが持てる趣味を今からやっておいてください。

スポーツ系で優勝歴、出場経験がある人は必ず押しましょう。

 

 

3、応募会社はそこで合ってる? 再確認しよう「エンドロール」

 

応募する前に、エンドロール、美術監督、背景会社、アニメ制作会社を再確認してください。

 

見るべきところは3つ。

  • 美術監督A   ← この人重要
  • 背景会社B   ← 美術監督との関係は?
  • アニメ制作会社C  ← 背景部ある?

 

面接トークに大きく影響します。必ず確認してください。

 

その理由はこんな感じになっています。画面がうるさいですが色分けして説明します。

チェックするエンドロール エンドロールの名が作品に対してどの位置に属しているか
美術監督A=背景の責任者
  • フリーランス
  • 背景会社B所属
  • アニメ制作会社C
背景会社B 
  • 美術監督Aが内部にいる=メイン背景会社
  • 美術監督Aが内部にいない=協力会社の可能性あり
  • アニメ制作会社Cとは別会社
アニメ制作会社C
  • 社内に背景部あり=美術監督Aが所属している可能性高く、背景会社Bは協力会社の可能性あり
  • 社内に背景部なし=美術監督Aはここに所属しておらず背景会社Bがメイン会社

 

「これ、何言ってんだ?」ってなると思いますが大丈夫です。画像と共に説明します。

 

まず。背景は美術監督が美術設定と美術ボードを作っているというは最初に説明しました。

その作品の背景は美術監督の技量で出来ており、最終決定も美術監督がするというのを覚えておいてください。

 

この「作品をS」としておきます。

 

背景会社Bに応募し、面接の志望動機で「作品Sの色や雰囲気に共感し、将来はそんな絵が描ける美術監督なりたいと思っています」と言ったとします。よく使う志望動機ですね。

 

ここで上記の表と照らし合わせてみます。わかりにくい業界ですよね。

 

面接の志望動機が「作品Sに共感しこんな美術監督になりたい」ですので「美術監督Aに憧れ、その人の会社で働きたく志望した」と受け取れます。

美術監督Aアニメ制作会社Cの背景部の人だったら、、、フリーランスだったら、、、面接でやんわり断られるか指摘されるかと思います。素人にはわからないのは当たり前なので怒られはしませんが、調べが浅いと受け取られます。

 

調べた結果、背景会社B美術監督Aがいなかった場合、「作品Sや、他の作品のような、御社が手掛けた作品の背景に共感し志望しました」にすると美術監督Aの元ではなく、手掛けた背景会社Bの元で働きたいとなり筋は通ります。

 

もし、どうしても美術監督Aの元で働きたい場合は、人物名で検索するなりして所属会社を調べるしかありません。フリーランスではないことを願います。

 

♦フリーランスだった場合

作品S美術監督A背景会社Bアニメ制作会社Cと付き合いが深い可能性が高いので、別の志望動機を見つけて何とか入社し、同じ環境になることを願って待つしかありません。

 

例を挙げれば、鉄コン筋クリート、魔女の宅急便、エヴァンゲリヲン(劇場のみ)がそんな感じです。是非美術監督を調べてみてください。特に、エヴァンゲリヲン(劇場のみ)のエンドロールは細かく書いてくれていますのでわかりやすいと思いますよ。

 

♦結局どうすれば?

 

エンドロールから念入りに調べるしかありません。エンドロールは下記の順で流れます。

 

アニメ 背景 就職

 

♦次の順で調べる

①:美術監督の名前を検索する

個人名で検索すると、Wiki、ブログ、twitter、facebookあたりが出てくると思いますので、プロフィールを見てみましょう。経営者や代表取締の方だと会社名がヒットするのでその会社も調べます。

  • フリーランス=個人経営者。この人の下では働けませんので志望動機を変更するしかありません。弟子入りはさすがに聞かないですね・・・
  • 未記入の場合=どこかに所属している可能性大

 

②:「背景」欄の次に出てくる最初の会社名を調べる

ここに出てくる最初の会社名は、その作品のメイン会社になります。

メイン会社は立ち上げから参加していたことになるんですね。

作品制作をスタートするときは美術監督と打ち合わせをしますから、会社所属の美術監督の場合、おのずと一番多く携わる形になるので、社内に在籍している可能性が高いんです。

  • メイン会社=美術監督在籍会社
  • 協力会社=背景のみ

 

③:「アニメーション制作」欄の会社も調べておく

エンドロール最後に出てきますが間違えやすいので「製作」ではなく「制作」側を見てくださいね。

  • 製作=スポンサー側、TV局側で、製作委員会という言い方をします。TVCM、広報などがこちら。
  • 制作=アニメを実際に統括したアニメ制作会社です。監督、シナリオ、絵コンテ、撮影等々。

 

アニメ制作会社のHP内、会社概要リクルート内に背景部署があるか確認してください。

  • 背景部署がない場合=美術監督が所属する背景会社、もしくは、一番上に出たメイン背景会社への応募が確実です。
  • 背景部署があった場合=美術監督が在籍している可能性があり、また、作品の背景はこの制作会社がメインというになり、背景の一番上に出た背景会社は協力会社である可能性が出てきます。

 

背景部があった場合は制作会社の背景部に応募するようにしましょう。

 

♦応募会社まとめ

美術監督名検索
フリーランスの場合はいつか一緒に働けることを願うしかない 所属会社が分からない場合 所属会社が分かる場合は在籍している可能性大
アニメーション制作会社内背景部を調べる(志望動機変更)
背景部があった場合はメイン背景の可能性大 背景部がなかった場合
エンドロールの「背景」後最初に出てくる会社がメイン背景の可能性大

 

美術監督に特別な感情がないならば、数作品の背景の特徴を混ぜた志望動機にするのが無難です。

「履歴書の志望動機」と「面接での志望動機」はこのあと「履歴書-失敗しない志望動機」「履歴書とは違う志望動機で臨む」で解説します。

 

 

4、提出書類①:履歴書 – 失敗しない志望動機

背景 履歴書 志望動機

履歴書はポートフォリオと一緒に送ります。これが第1次試験です。

 

最初のお伝えしましたが、履歴書の重要度は5%程度です。しかし、一緒に送る志望動機とポートフォリオで65%にまで跳ね上がります。

面接は35%ほどなので、ここを乗り切ると合格率は一気に上がりますからしっかり練りましょう。

 

履歴書はパッと見の印象から試験が始まっています。きれいな字、心のこもった楷書、文字の隙間、垣間見える日常、考えぬかれた志望動機があって初めてしっかり読んでもらえるものです。

 

なぜなら、書体は絵と一緒で意気込みが表れるからです

 

そして、一番迷うのが志望動機ですね。

 

結論:志望動機は気持ちを連なるものではありません。

 

  • 「昔から背景が好きで、絵を仕事にしたいと思っていました。専門学校へ入り、就職活動で御社のHPをみて応募しました」
  • 「小さいときに見た〇〇アニメに感動し、そんな仕事に就きたいと思ってました。△△専門学校は御社に入社した卒業生が多いと聞き、私もそこで学んで勉強し応募しました」
  • 「昔見たアニメの背景に感動し、そんな仕事に携わりたいと思って専門学校の門をたたきました。Photoshopを学び、デッサンを習得し、土日は課題をこなして勉学に励みました。」

 

このように幼少期からの気持ちを連なっていませんか?

厳しいですがどれも良い印象を与えません。具体性がなくどの会社にも出せる志望動機です。

 

どうして今回の応募まで至ったのか」「なぜその会社なのか」を説明するものと考えましょう。

重要なのは、「なぜその会社なのか」というところです。

 

志望動機は次を一つずつ入れるように書くのがオススメです。順番は内容次第で変えてください

  1. 希望会社の背景への具体的共感部分
  2. 会社の方針に共感する内容
  3. 内定後に繋がる身近な目標
  4. 背景人としての最終目標

 

例をいくつかあげておきますね。

 

♦良い志望動機例

1、希望会社の背景への具体的共感部分
  • ○○作品の色使いやリアルな表現が~
  • △△シーンの夕景の色や××作品の夜景の美しさに感動し~
  • 〇〇作品のどこどこの風景画に感動して
  • アナログ風なやわらかい見せ方を私も仕事にしていきたく~
  • デジタルでもデジタルらしくないデフォルメ表現が~
  • リアルな作品だけじゃなく、かわいい系のコミカルな表現、特に〇〇作品のような~
  • 過去作品の傾向が私の理想
  • ポートフォリオを作ったきっかけが御社の作風を覚えたかったから
2、会社の方針に共感する内容
  • デジタルの時代でもアナログ感を大切にしていることに共感
  • アニメーションならではのデフォルメを主体とした作品制作
  • ジャンルを問わない幅広い仕事量
  • 社会人として雇用保険や勤務時間が確立しているところ
  • 3Dにも力を入れているところ
3、内定後に繋がる身近な目標
  • 早く業界に慣れ、一枚でも多く作品をこなせていけるようになりたい
  • 効率よく描き進められる技量を身に着けたい
  • 先輩の絵柄、技術を少しでも多く吸収し、より多くの作品に貢献したい
4、背景人としての最終目標
  • まずは、自らの名前で仕事がもらえる美術監督になる
  • 社会人として実績を積み、家を建てたい(ここはなんでもいいですが退社しない内容で)
  • 少しでも早く貢献し、2つ3つと同時にこなせるくらいな柔軟な対応が出来る背景職人になりたい
  • この業界で生計が立てらる人になり、家族を持ちたい
  • まずは10作品美術監督になる
  • 美術設定も出来る美術監督になる

 

 

♦悪い志望動機例

  • アニメを見るのが好きで
  • アニメに携わりたくて
  • 業界に興味があり
  • 求人が出ていて
  • 昔から入りたいと思っていて
  • 休日があり
  • 勤務時間が18時退社だった
  • 面白いアニメが多い
  • 物語が面白く
  • キャラクターがリアルで
  • 原作が好きで
  • 親にすすめられた
  • 先生に進められた
  • 好きな作品ばかり
仕事は見るのはなく描くことで、ゲームやパチンコなどアニメ以外も仕事を受注します。また、TV業界の放送枠が決まっているとてもシビアな業界です。

希望会社オンリーの理由が良く、どこにでも出せる志望動機では心に響きません。

 

言葉一つ違うだけで良い例もダメな例になりまたその逆もしかりで、アニメを見るのが好きで~は背景を見るのが好きで~に変えればギリギリいけます。一番いいのは「描くのが好き」という印象です。

 

「なぜ?」の答えを含め、「背景」+「描く」という内容にすれば大丈夫です。

 

実はアニメは見なくても大丈夫です。私は幼少期から勉強以外でほとんど見ません。

 

ちなみに・・・

  • 絵を描くのが好き
  • 背景を描くのが好き

 

これらの言葉に意味はありません。

絵が好きか嫌いかはポートフォリオを見ればわかることで、そもそもの話なんですね。

背景が好きだから志望していると思っているので、「絵の〇〇を△△にするのが好きで~」くらい具体性がほしいです。ただ「好きで~」なら狭い志望動機の枠が勿体ないので変更しましょう。

 

しっかり時間をかけ、意味を理解して練られた志望動機は安心を与えますが、簡潔に仕上げたものは悲しさすら感じます。

履歴書に目を通す方は、何千、何万と見てきたわけですから、変わったことを書けとは言いませんが、悲しさを感じさせないよう気を付けましょう。

 

 

5、提出書類②:ポートフォリオの中身はこれ

背景 ポートフォリオ 詳細

 

 

ポートフォリオとは、自分の実力を示すために作った数点~数十点の作品ファイルのことで、良いポートフォリオとは、働く意欲が感じる、納品と同じ形になっているものです。

 

現在ポートフォリオがある方は是非下記を確認してください。

 

♦働く意欲が感じるポートフォリオとは

背景の仕事は、「絵を構成しながら美術ボードに合わせて描いていく」ことで、働く意欲とは仕事として描いていきたいという熱意が作品から読み取れるかということ。

 

「デジタルソフト?描ければなんでもいいんじゃない」

「3D?2D背景希望なんでしょ?」

「人物デッサン?将来イラストでもやるの?」

「Photoshop検定?へ~、行動力は買うけど描けるようになった?」

「試験しますね~、30分で〇〇と△△を見栄えの良い構図でデッサンして~はい、鉛筆と消しゴム」

「デッサンもデジタルじゃないと?ポートフォリオのデッサン、色調補正とか素材はめ込み使ってないよね?」

 

と、まぁ、働くというのはこんな感じです。

この後ポートフォリオの比率を説明しますが、ここでわかる通り「描く」というが見せれれば、アナログでもデジタルでも、デッサンでも水彩絵の具でも大して変わりません。

 

♦納品と同じポートフォリオとは

決められたテーマを、指定のクオリティーで、且つ、制限時間内で仕上げてあるものを言い、ファイル名、作品名、データ名もしっかりわかるよう明記されているもの。

 

これ、よく考えると怖いことを言っていると思います。

 

きれいな絵、クオリティーの高い背景が描ければよいわけではなく、テーマが見え、少ない時間で描くことが求められています。タイトルがつけれるか確認してみてください。

 

  • 順光の中で、木のテーブルに置いてある静物が、三点透視の広角レンズで取られた背景。制作時間5時間
  • 都心にあるにぎやかな商店街を、2階から標準レンズで撮った一点透視のアングル背景。制作8時間

 

テーマとは映画の1シーンと考えると簡単で、どんな目的で描いたのかがわかるものですね。

模写なら勉強の為ですし、写真模写なら現実を理解する為、オリジナルなら?←これが「映画の1シーンを短時間で」というのが仕事になってます。

8畳一間を30時間かけたなら、入れないほうがいいです。

 

デジタルはレイヤーの分け方、拡張子、ネーミング、データ量も納品に関わります。これは後で説明します。

 

 

♦悪いポートフォリオ

  • コピペ、張り込みはばかりで、フィルター機能などに頼りきった作品
  • パース定規を使ったり、トレスに頼ったりと描く行為を省いている
  • 人物が多かったり、仕事に関わらないものが入っている
  • 短時間で終わる見栄えのいい絵ばかりのもの(夕景シルエット、夜景でキラキラしたもの、雲のみ、あちこち光らせているものなど)
  • アナログが一枚もないもの(デッサンはアナログに入りますが、水彩よりは印象が薄いです)

 

パース定規ってわかるの?」と思うかもしれませんが、デッサンを見れば普段の練習の仕方はわかりますし、自然背景、オリジナル背景でパースが取れていないはずです。デジタルとアナログの差がありすぎるのが証拠です。

 

 

♦中身の配分はこんな感じが良いです

 

①:鉛筆デッサン5割

②:カラー彩色4割

③:線画1割

 

多すぎず少なすぎず、20枚~40枚あたりで。

アナログ用ファイルなら10ポケット20枚入りから、20ポケット40枚入りで大丈夫です。

データ発送でも同じですね。ただ、作品に偏りがあるのは良い印象を与えませんので気を付けてくださいね。

 

では一つずつ紹介します。

 

①:鉛筆デッサン5割の詳細

デッサン ポートフォリオ 詳細

  • スケッチ(クロッキー)=0.5割
  • デッサン=4.5割

 

スケッチは1つ10分程度で、小物、静物を1枚の紙に4個~6個埋めて描きます。

1枚1つでもいいんですが、枚数が多くなる分無駄なので、A4サイズなら4つ、B4サイズなら6つくらいでいいかと

 

デッサンは、静物、室内、建物、自然物を偏らないように増やしていきましょう。

必ず含めたいのは、接し面素材の一角アップの質感です。この3つはかなり重要です。

  • 接し面=ブロック塀と道路の隅や室内と床の角、幾何形体と床、静物が置かれている白い布など
  • 素材の一角=ビルの窓や車のタイヤ、フローリングの汚れと木目。引き以外という感じ
  • アップ=質感は描かざるを得ないので、どんなものでも大丈夫です。ジャンルは下記参照

 

新人さんは見栄えの良い絵、引きの絵を入れたほうが良いと考えがちですが、それは美術監督の仕事で新人はアップや一角を担当します。ポートフォリオは「働く意欲」が感じるとことがポイントなので、詳細描き分けを多めにしてください。

仕事に直結する絵を入れましょう。

 

 

②:カラー彩色4割の詳細

カラー彩色 ポートフォリオ 種類

 

  • 作品模写1割
  • 写真模写1割
  • オリジナル2割

 

仕事に直結する絵は室内背景の模写です必ず入れてください。机とベット、カーテンと窓、一軒家の玄関、塀と道路、縁側と家庭菜園、テーブルと観葉植物、商店街の1F、改札、教室などなど。

 

ちなみに、昼間、明るい背景が多めでお願いします。

 

デジタルが普及したことで、最近はオリジナルが見たくなってきています。

正直オリジナルは難しいので避けていた時代もありましたが、会社によってはオリジナルしか見ないというところが出てきています。

 

写真参考がある状態で描いたものもオリジナル背景に入るので、見本を探して良いとこどりをしながら描きましょう。

 

 

③:線画1割の詳細

線画 美術設定 ポートフォリオ

理想は美術設定です。

 

普通に見たアングルや設計図的なものがあるといいですね。

美術設定は正確な作り、寸法、配置を説明した線画です。構図はオリジナルでも、物の作り、サイズは勝手に変えないように。

例えば、日本家屋の畳は縦横長さが違うだけではなく、1:2の割合になっており、1820mm×910mm。長いほうに耳があり2畳合わせると正方形でこれを一間(イッケン、またはヒトマ)と言います。1820mm×1820mm。

これは窓も、ドアも同じ大きさになっているんですね。

 

建築士ではないので多少は大丈夫ですが、畳の耳がある場所、2畳で正方形になることを知っている業界人が試験管だということを忘れないでください。

 

ポートフォリオのジャンル一覧を書き出しておきます。偏りがあると趣味の延長と取られてしまうのでご注意を。

 

重要なので何度でもお伝えします。ポートフォリオは働く意欲が感じる、納品と同じ形になっているものです。

 

下記を混ぜて完成度を高めてください。

絵作り構成 質感 イメージ
  • テーマ
  • コンセプト

 

  • 光源・ライティング
  • 構図
  • バランス
  • 大中小
  • 遠中近
  • 一点透視
  • 二点透視
  • 三点透視

 

  • 日の丸
  • 黄金比
  • 三角バランス
  • 門構え
  • シンメトリー
  • 舐め

 

  • 被写界深度
  • 望遠
  • 広角
  • 魚眼
  • 布、紙、石、土、草、葉、幹、砂

 

  • 金、銀、銅、鉄、ステンレス

 

  • 鏡、ガラス、ビニール

 

  • 汚れ、錆、シミ、垢

 

  • 硬い、やわらかい、滑り、粘り
  • 四角
  • 楕円

 

  • 三角錐
  • 円錐
  • 円柱
  • 円筒
  • 立方体
  • 長方体
  • ラグビーボール

 

  • 大きい
  • 小さい
  • 白い、黒い
  • 有彩色、無彩色
  • 高彩度、低彩度
  • 発光とペンキ
  • 寒色、暖色、中性色

 

写実的

抽象的

アニメ的

デフォルメ風

コミカル風

 

厚塗り

リアリティー

手描き風

アナログ風

 

かわいい、怖い、渋い、濃い、淡い、寒い、熱い、温い、軽い、重い

 

  • 静物画=携帯、ボールペン、グラスが白いタオルの上に乗っている:四角、円柱、透明、楕円、白と布
  • 室内背景=箱の中、机とPC、布団、カーテン:艶、鈍い艶、機械系艶、四角、布、窓、重力
  • イメージ=渋いが多種多様な色使いの古い街並みをフリーハンド:鉄コン筋クリート風
  • 絵作り構成=学校3F窓から見下ろした角度で望遠を使って撮影した校庭の遊具:三点透視、窓舐め、望遠、距離感

 

背景の種類について、別記事を書いています = 「背景の種類・ジャンル・描き分け

 

勘違しないように業界がデッサン」というものをどう捉えているかお伝えしておきますね。

 

 

デッサンとは、実物を見ながら、見たままを白黒で紙に表現したものです。

 

想像で描いたものは、想定デッサンになり、完全に絵作りしたものはオリジナルに入るのでデッサンとは言い難いと考えてください。

 

実物(妥協して写真)を見ながら、そのまま表現しようと努力したものがデッサンなので、「デッサンする=実物を知り、絵に描き起こせる」となり、練習題材の基本になるんです。

その中で、白いものは光源の色、空気の色、周りとの干渉で見えているもので、また、距離や重さを表現するのに難しい題材であることから、基礎練習で石膏をするんですね。

それを、鉛筆という白黒(明暗)のみで表現できるようにするわけですから、デッサンが描ける=絵が描けるとなり、ポートフォリオではデッサンが見たくなる理由に繋がります。

 

スケッチ(クロッキー)とは、形を表現したもの。10分クロッキー、20分スケッチなどと言います(あくまで捉え方です)

 

  • デッサン=輪郭線がなく、面の明暗を使ってリアルに描く練習をすること
  • スケッチ(クロッキー)=輪郭と簡単な明暗を使って短時間で練習をすること

 

 

♦作品名、データ名、レイヤー分け

 

最後に作品名、データ名、レイヤー分けについてお伝えします。

 

作品一つ一つに以下のような明記をします。文字化け防止の為、数字や記号、隙間は半角英数がいいです。

作品データ名 フォルダ名

 

作品名とデータ名は同じ、拡張子はpsdかjpgで大丈夫です。

  • 〇〇学校_〇〇科_名前_タイトル「△△」_オリジナル_〇月〇日_5時間
  • 20210131_〇〇模写_Photoshop_10h
  • 〇〇作品模写_〇月〇日_Photoshop_10時間
  • 〇〇写真模写_〇/〇 Clip studio_15h
  • アナログ背景_テーマ「△△」_〇/〇_ポスターカラー_20h

 

データで送る場合は多くの応募者、他人のデータと混ざると思って、必ずどんなデータなのかを統一したネーミングでつけましょう。また名前の順になるので、「頭に番号_次に日付」と入れたほうが良いかもしれません。

 

名前に迷ったら、大きい順と覚えるのがいいですよ。学校、科、クラス、名前、テーマ、制作時間ですね。

この中で「テーマ」と「制作時間」で内定が左右されると思って制作に臨んでください。特に制作時間です。

 

レイヤーはやりっぱなしにする人が多いので納品だと思って相手にわかるように。

背景 納品 レイヤー

 

 

6、面接と試験対策

 

これは他記事と重複してしまう為割愛しますが、とても重要なので下記別記事の「6、面談、実技、筆記」を読んで戻ってきてください。

別記事 ⇒「アニメ業界の就職の手順+未経験でもわかる探し方から面接後の研修まで

 

7、面接①:履歴書とは違う志望動機で臨む

背景 アニメ 面接トーク

 

面接で必ず聞かれる志望動機は、履歴書の丸暗記は勿体ない。

 

履歴書はすでに目を通しているはずで、志望動機も読めばわかることを面接ではあえて聞いています。

面接という限られた時間で、それも内定がかかっている最後のチャンスに履歴書に書いたことを伝えるって非常に勿体ないです。

 

同じ意味になるのは絶対ですが、きっかけになった作品を違う作品にして伝えるとか、履歴書以外にこっちも動機です~みたいなほうが得だと思います。

志望動機後は「どこが?」とか「なぜ?」と聞いてくると思うので、嘘にならないよう本気で好きになってくださいね。

例えば、「〇〇という作品の△△の背景が好きで志望しました」は「どんな背景だったっけ?」や「どうしてその背景?」とか返したくなりますよね。むしろその返しこそ真実を聞いています。

 

そこで答えられない場合、志望動機は嘘になってしまいます。

「聞いてくれ~」というくらい準備しておいて、「柔らかい色使いときれいなグラデーションが~」、「黄色と紫の補色が気持ちいいほど目に飛び込んできて~」と背景につながる会話に持っていけるとグッドですよ。

 

何度も書きますが嘘はだめですよ!

本気で志望してるならそれくらい調べますよね?ってことです。

 

 

8、面接②:よくある質問&回答例

よくある質問、解答、良くない答え方、悪いイメージを一覧にしました。あくまで例ですが心の準備には良いかと。

♦よくある質問例

質問 意図、答え方
背景に進もうと思ったきっかけ  思い入れを遠回しに確認していると思います。
背景に進もうと思った時期 最近だった場合は大きな変化があったということになり、↑のきっかけに繋がります。
今の専門学校を選んだ理由 すでに社員にいる可能性があります。
好きな背景  「なぜか」まで用意
苦手な背景 「対処法」までが1セット
将来どうなりたい 貢献、退社、フリーランス、独立の可能性に繋がります。
手描きはないがよいか 即答でイエス
両親の年齢 まわりへの興味。特に両親を知らないのは致命的です。
両親は賛成しているか 即答でイエス。反対していたり、迷っている仕草は絶対にだめです。
趣味 できればアウトドア系で得意なもの。その後の会話へ無理やりでも繋げられると最高です。
学校、仕事が休みの日は何をしている 一人で引きこもりは×。できるだけ友達と外へ出てください。
何かスポーツをやっていますか? 今からでもやってください。ウォーキング程度でも大丈夫です。
絵を描く以外の時間は何をしていますか? できればアウトドア系で得意なもの。
出席率は 聞かれないことを願う。出席率=出社率。日常勤務に関連。
先生はどこの会社出身でどんな人 上司、先輩と上手にやっていけるか。
尊敬している人 他人に興味があるか。身近な目標。
他社を受けているか 内定しても逆取り消しの可能性があると捉えられる為、しっかい説明できるのが良いです。
アニメは見るか  見なくてOK。見るなら勉強の為。
実写映画は見るか 必ず見てください。タイトル、主演、好きな傾向くらいは言えるくらい。
写真好きか 必ず撮ってください。
引っ越しをするか  会社近くに引っ越すことを望む傾向にあります。絶対ではありません。
つらいが大丈夫か  即OK。
授業はどんな感じ   知らない=出席してない。
実家 若い方はホームシックにならないか不安。
落ちたらどうする 次の会社の傾向を知りたがっています。同じ絵柄の会社が吉。志望動機が嘘にならないように。
次受ける予定の会社 同じ絵柄、同じ雰囲気の会社であるべきです。志望動機で絵柄、方針を混ぜていると思うので、明らかに違う会社は、その場限りの志望動機だったことを裏付けます。
3Dソフトは使えるか 使えなくても大丈夫。「興味があります」くらいはあるとよいかも。
自己PR30秒~1分 自分を理解し、練習してきたかが出ます。
手描きが好きな理由 好きと言った人は何となくが多いと思うので、油絵出身だったとか、色鉛筆で描いていた、タッチが好きなど具体性を込めて。
今日は何で来た?混んでた? 練習出来ない突発的対応力が試されます
今朝気になったニュース 練習出来ない突発的対応力が試されます
それはなぜ 練習出来ない突発的対応力が試されます

 

近年、圧迫面接という言葉が気になってきていますよね。

気にしている会社は上記の内容を聞いてこない可能性がありますが、基本ズバズバ聞いてくるものでそれは普通のことだと思います。

 

 

♦良くない答え方や悪いイメージ

良くない答え方 理由、考え方
背景が描きたいので志望した 他社でも通じる動機。
アニメが好きで業界を選んだ ゲーム背景も描きますし、仕事は見ることではなく描くことです。
休日はアニメを見ている 外へ出てください。アニメは見なくてOK。
一日ゲームをしている 外へ出てください。もしくは友達とやってください。一人引きこもり×
実写映画は見ない アニメ背景は映像系のクリエイターです。
写真嫌い 観察しない人と思われます。
両親と仲が悪い 絶対に受かりませんので言わないほうが良いかと。
両親反対 絶対に受かりませんので言わないほうが良いかと。
ニュースを見ない まわりに馴染まないと思われます。
欠席多い 欠勤すると思われ、病弱のイメージを与えてしまいます。
まわりに興味ない 観察力と行動力がこの業界の基本。

 

引っ越しについては、必ずと言ってもいいほど聞いてきます。深夜遅くなることもあり、また、通勤費の出費も関係してのことです。

体力と通勤のバランスをしっかり考えておくと良いかもしれませんね。

無理に近くへ引っ越さなくとも大丈夫ですよ~。生活リズムを気にしてくれる会社は昔よりかなり増えました。

 

特別何かをしてほしいわけではなく、ごく普通にコミュニケーションが取れ、自ら上達する気持ちが伝われば大丈夫です。礼儀も普通のことです。退出するまで見られていますので気を抜かずに次を意識しましょう。

 

 

9、面接③:最後は必ず「質問」と「お礼」で「失礼します」

 

「他に何か質問ありますか?」は「これで最後ですよ」という意味です。

 

良い印象を与える質問を必ずしましょう。もし聞かれなければ、自分から「質問いいですか?」くらいあるとやる気が見られます。

 

♦良い質問例

近くで治安がよさそうなところありますか? 仕事の為に引っ越そうとしているとみられる。
日曜も働けますか? それくらいの気持ちはあっていいと思います。やる気十分。
卒業までに(出社初日までに)強化しておいたほうがいいこと、または背景はありますか? 前向き、勉強熱心。
写真や実写映画でオススメはありますか? 背景は実写から学ぶもので、貴重な意見がもらえると思います。話も弾みますし、何よりほとんどの社長さんは映画の話が大好物です。
オススメの画集はありますか? 買うかは別ですし、勉強する意気込みは感じられます。
勉強しておくアニメはありますか? 先輩との仕事上のやり取りでアニメの雰囲気話が出ることがあります。
先輩はどんな趣味の方が多いですか? 入社後話を合わせやすくなります。

 

♦悪い質問例

ボーナスは出ますか? 意気込み、興味、嫌々、趣味の延長とマイナスになるものは言わない
土日休みですか?
残業代は出ますか?
手っ取り早く描く方法はありますか?
有給有りますか?
早く帰れますか?

 

 

♦面接終了後、退出時

面接後はそのまま会社見学になったり、先輩の紹介をおこなったり、その場で合否を言われたり、後日郵送だったりと終わり方は様々ですが、どんな状況でも最後はで締めましょう。

 

まずは「本日は貴重なお時間を頂きありがとうございました」から入り
「ご連絡お待ちしています。」

「精一杯頑張りますのでご検討のほどよろしくお願い致します。」

「お手数おかけしますが、どうぞよろしくお願い致します。」

のようなことを挟み、「失礼します」で、退出。

 

挟むトークが、学生らしくなくなってしまうようなら、もう少し柔らかくていいと思います。ビジネスマンになってますね。

 

とにかく、貴重な時間を割いているので、「ありがとうございました」と「よろしくお願いします」があって、「失礼します」で退社です。

 

 

10、最後に

多くのことを伝えてきましたが、絵が描けてからの話です。

 

と言いながら、やる気を買ってくれる夢のある業界です。

 

人気がある職種ではありませんので、社員確保は業務運営の最重要課題になっているんですね。

 

アニメを見ずとも、ポートフォリオの完成が不十分であっても、行動を起こしたことを評価してくれるので、怖がらずに応募してみることをオススメします。

 

「背景はセンスや才能が必要」と思われることが多いイメージですが、美術監督が描くボードに合わせれれば十分にやっていけます。そこに天才や才能はいりません。

そして、一枚売っていくらという画家さんとは全く違い、基本給がしっかりある上アニメ業界では固いほうだと言われるのが背景業界です。さらに歩合も付きやすく、1年目で大卒を超えることはざらです。

 

経験を積んでしまえば場所も選びません。

テレワークが重要な時代になりましたが、フリーランスの方はずーーーーと自宅作業です。何も珍しいことではありません。

私は過去9回引っ越しをし、日本あちこち移動していましたが、すべてネットを介して東京の方と仕事をやり取りしてました。今でも同じです。

そのことは請求書や税金の話になった時初めて知ることで、作業はどこでやっていても同じなんですね。定年も自分で決められます。

 

少しでも迷っている方は、是非一歩踏み出してほしいと思います。別に取って食いはしませんので(笑 

 

「死ぬこと以外かすり傷」

 

いい言葉ですね。

彩玉